詩人になりたかった僕たちへ

詩とは、こころの涙なのでしょうか。

荒れた地に飛んできた
ちいさな種があった
ただ太陽ばかりが
つよく照りつけるような地だ
とっくに養分は枯れ
雨が降るのは
いつになるのか 分からない

種には何もかもが初めてで
そんな境遇を くるしいとは思わなかった

やがて 雨が降った
どれくらい振りの雨だったろう
種は気持ちがよくて 嬉しかった

ある日芽を出してからは
すくすくと育った
通りがかりの鳥達や 大きな体の動物の話で
この地が過酷であることを知る

けれど種は
いま生きていることを思った
それだけを信じた
鳥達や たくさんの動物も
みんな 種のことが好きになった

種の周りにはいつも友達がやって来たので
その地には いつのまにか
養分や新しい種の仲間ができていた

花が生き 熟した実はやがて種を落とし
鳥達や たくさんの動物が住み
それはそれは賑やかで
かつてここが荒れ地だったことなど 
もう忘れてよかった

種はいまや力づよい一本の樹になった
丈夫な根を伸ばし
鳥達の快適な家になり
動物たちの雨宿となり
いつも 楽しそうに笑って
だいすきな おしゃべりをした


ありがとう
君が生まれてきてくれた日よ














松井絆