空き地の音(ね)
広い 空き地の真ん中で
とてもよい音のする楽器を
吹いている人がいる
空に抜けるように
風に乗るように
その楽器の音が
街に届いてゆく
帽子を被ったその人は
広い空き地の真ん中で
ただ一人
大きな空の下で
たった一人で音を奏でる
その背中は小さくても
僕にはその人が見えている
街ゆく人は誰も
気付いてはいないかのように
歩をすすめている
風そのものが音楽になったように
爽やかな夕景のはじまりに溶ける
ゆっくりと 雲は流れる
僕はあの人が
天使ではないかしらと
本気で考える
松井絆